またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

『のだめカンタービレ』はコメディドラマの王道です


実は連ドラでやっていた時にはこのドラマを見ていません。評判は聞いていたのですが、仕事上無理な時間帯だったのです。お正月の2日、朝起きてTVのリモコンを押したら、このドラマをやっていたという訳です。本当は箱根駅伝を見るつもりだったのですが、あまりに面白くて駅伝なんてどうでもよくなってしまいました。(でも翌日のゴールシーンは仕事場でしっかり見ました。駒大関係の皆様おめでとう)おかげで夕方までTVの前で過ごすはめに。
この『のだめカンタービレ』というコメディは、久々によく出来た作品でした。私は昔TBSでやっていた、向田邦子脚本、久世光彦演出の『時間ですよ』や『寺内貫太郎一家』が大好きでした。『のだめ〜』がそれに匹敵するかどうかは分かりませんが、コメディの傑作だと思います。何よりクラシックという音楽を絡めた点も新しいですね。クラシック・ミーハーの私がハマるのも無理はないのです。
今回2夜連続のスペシャルは、主人公のふたりが日本から海外に飛び出して、それぞれ試練を乗り越え成長し、お互いの絆も深まるという内容で、かなり駈け足だがうまく時間内に収めた。
ふたりが滞在するのはパリの学生寮で、またもや部屋は隣。パリには行ったことがないのだが、のだめの留学先コンセル・バトワールはもしかしたら本物?のだめが偶然モーツアルトのミサ曲を聴く協会は何処?海外ロケでも、字幕は使わずフランス語で話しているつもりのいいかげんさもご愛嬌。日本TV界の外タレ総動員という感じも笑い。
プロデューサー曰く「変態ピアニスト・のだめ」と「俺様指揮者・千秋」のSMカップルのバトルが定番だが、今回はのだめ千秋を、パリの町中で跳び蹴りし、首を絞めるという逆転が起こる。そこにのだめの成長が見てとれる。
このふたりのキャラが面白く、音楽家というのは(まだ卵ですが)かなり変人ぞろいなのは有名な話。天然お馬鹿の野生児M子は、潔癖性の独裁者S男に邪険に扱われながらも、いつも側にくっついている。男の方もたまに見るに見かねて世話を焼く。ふたりを結び付けているのは若さと音楽だ。漫画が原作のせいもあるが、過剰なコメディタッチの演技をものにする上野樹里は本当に可愛いし、絵に描いたような端正さで魅了する玉木宏もいい。
高名な指揮者を演じる竹中直人は無着苦茶なドイツ人に扮し、ヴァイオリンの瑛太始め楽団員も個性豊かな人材だ。私は少しだけ学生オケにいたことがあるのだが、楽団員はみんなプライドが高く、我侭な人が多い。ただ一緒に演奏していくうちに連帯感が生まれてくるのだ。自分の学生時代の思い出も相まって、若かった頃がなつかしい。この作品は青春ドラマの傑作でもある。
音楽のことも忘れてはいけない。実際にドラマ内で演奏される曲で大きく取り上げられているのは、ベートーベンの7番と、ブラームスの1番である。ベートーベンの交響曲は、3、5、7、9と奇数番に名曲が並ぶ。7番は他よりも有名でないかもしれないが、私は大好きだ。ぐいぐいと迫ってくる高揚感が気持ちいい。ブラームスは生涯に4つシンプォニーを書いているが、少ない分密度が濃く、4曲とも名曲だ。1番もハーモーニーの重厚さにうっとりする。両方とも若い指揮者とオーケストラには向いている。
エンディング・テーマにも使われていたガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」は、ピアニカをフューチャーした斬新なアレンジ。ドラマ内でも一番楽しくて凝ったステージを見せてくれた。
モーツアルトは、オーボエ協奏曲(オーボエは繊細な楽器で、普通オーボエ奏者は病的に神経質である)と、のだめがお城で弾いた「キラキラ星変奏曲」と最後のソナタ(何番だっけ?)。教会で合唱隊が歌っていたのは、パバロッティの葬儀に友人のボティチェリが歌った美しい曲「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。
ラフマニノフのピアノ協奏曲2番は、千秋がシュトレーゼーマンに弾かされる難曲だが、映画『逢引き』や『七年目の浮気』などに使われているロマンチックな曲でもある。