往年のフランス映画に酔う―『肉体の冠』
Casque D'or/ジャック・ベッケル監督/1951/モノクロ/スタンダード/フランス
- 出版社/メーカー: ジュネオンエンタテイメント
- 発売日: 2003/03/04
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先月、有楽町の朝日ホールで「フランス映画の秘宝」という企画をやっていて、クロード・オータン・ララの『パリ横断』(1956)と、モーリス・ピアラの『刑事物語』(1984)の2本を観た。
会場は驚く程年配の方でうまっていて、若者たちより反応がいいのに驚いた。笑うべき時は笑い、驚いたときは素直に驚く。最近の観客はお行儀が良すぎるのだ。映画の愉しみ方は昔の人の方が上手い。
『刑事物語』は期待はずれだったが、『パリ横断』はよく出来たコメディだった。機会があったら観てほしい。
その「フランス映画の秘宝」のつづきとして、渋谷のシネマ・ヴェーラでアキム・コレクションと題して16本の往年の名画を上映している。
ジャック・ベッケルの大ファンとしては、未見の『肉体の冠』を見逃す訳にはいかなかった。
ジャック・ベッケルは、それこそフランス映画の秘宝、ジャン・ルノアール監督のもとで助監督をしていて、大きな影響を受けている。作風も共通点が多い。
冒頭、川でボート遊びに興じる男女が出て来て、バールでダンスを踊り出す。まさにルノアールの世界そのものだ。『ピクニック』や『恋多き女』なんかのシーンがだぶって見えてくる。それだけでもう嬉しくなってしまう。
娼婦マリー(シモーヌ・シニョレ)と大工マンダ(セルジュ・レジアニ)の恋物語だ。マンダは、マリーをめぐってヤクザと警察から追われる身になる。脱獄映画の傑作『穴』でミステリーが上手いのは知っていたが、マンダが警察から逃げるシークエンスの切れの良さ。悪女と見せかけて、一途に愛をつらぬくマリーの、大胆な行動に驚かされる。特にマンダの最期を見届けるラスト・シーンは唸った。
魔性の女、ファム・ファタルを演じたシモーヌ・シニョレは、この作品が出世作だそうだが、あの存在感は若い時からのものだったのね。顔が男優より大きいのが気になっちゃった。