またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

さようなら、市川崑監督


市川崑監督に会いに行ったことがある。といっても監督の旧作『おとうと』(60)の上映会で舞台挨拶を見に行ったのだ。新宿の伊勢丹裏のテアトルシネマだった。その時は岸恵子も対談相手として来ていて、あこがれの女優さんに会えるから足を運んだのかも知れない。
監督は出番前、何故か観客と一緒にそう広くないロビーのソファーに座って煙草を吸っていた。いつも煙草をくわえているというイメージどおりで笑ってしまったが、たぶん気さくな人なんだろう。ファンに取り囲まれて、何を話しているのかわからなかったが、私は遠巻きに見ていた。その時岸恵子が隣にいたかどうか憶えていないが、通路を歩く、彼女の細い足が印象的だった。
一昨年、岩井俊二監督が撮った『市川崑物語』は、岩井俊二市川崑へのラブレターだ。私が書いた映画評も市川崑へのラブレターのようだ。→市川崑+岩井俊二=『市川崑物語』
92才の生涯で、70本以上の映画を撮った多作の人だ。小津、黒沢らが活躍した戦後の日本映画黄金期の最後の生残りかも知れない。奥さんの和田夏十さんが脚本を書いていた時代の作品に名作が多い。私が好きなのは、前にも書いていたように(上のリンクをクリック)『ぷーさん』、『黒い十人の女』、『おとうと』、『日本橋』、『吾輩は猫である』、『細雪』なんかかな。もちろん『犬神家の人々』も面白い。まだ未見のものがたくさんあるので楽しみだ。
YOU TUBEの動画は、市川崑の照明を見て欲しいがため。女優を綺麗に撮る事で有名だっただけあって、山口百恵が本当に美しい。いつも顔の半分が影になるように照明を当てている。『日本橋』の芸者役、粟島千景は溜め息がでる程美しかった。『黒い十人の女』は、文字どおり綺麗な女優さんが10人も出て来て、まるで今の資生堂のシャンプー椿のCMのようで笑ってしまう。この作品は斬新なブラック・コメディで、若い人達に是非見て欲しい。船越英一郎のお父さん、船越英二がどんなにいい俳優さんだったか知って欲しい。

市川崑物語 [DVD]

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現在、神保町で監督の作品を連続上映しています。是非見に行ってね。