またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

ギャンブラーって、まったく!―『ラッキー・ユー』

(Lucky Yuo/2007/アメリカ)  

お目当ての映画が休演だったので、『プレステージ』と迷って『ラッキー・ユー』を選んだ。
最近はずれが多いだけに勘に頼って観たが、大当たりとはいえないがまあまあだった。
映画の内容も「勘と運」が勝負のギャンブル映画だ。
始まってまもなくクラブのシーンで、聞こえてくる歌声に胸がときめいた。マデリン・ペルーではないか?ビリー・ホリディの再来といわれている彼女の歌っている姿を初めて見た。おもわず、ラッキー!と思った。レナード・コーエンの「Dance Me To The End of Love」のカバー曲だ。そういえば、ビリー(Billei)って何の愛称だったっけ?ドリュー・バリモア演じる、この映画のヒロインもビリーと名乗っている。監督はビリー・ホリディが好きなのかも。
ドリュー・バリモアも新人クラブ歌手として歌っているが、こちらは期待はずれ。挿入歌はボブ・ディランブルース・スプリングスティーンなどセンスがいい。

監督のカーティス・ハンソンは、『L・Aコンフィデンシャル』、『ワンダー・ボーイズ』等の私のお気に入り作品を撮っている。今回も期待したが、全体的にテンポがゆるく、からんでくる恋愛も上手く描かれているとはいいがたい。
一方、ポーカーの場面の描写は微に入り、細に入りといった具合で、ルールを知らなくても見ているうちに何となく分かってしまう。ポーカーに興味が持てないと、途中で飽きてしまうだろう。
エリック・バナ演じるギャンブラーのハックはポーカーを生業としていて、生活臭のまったくないガランとした家に住み、女性と遊び以外で付合えない。ポーカーの世界チャンピオンの父との確執が、ポーカーと並ぶテーマの柱となっている。

俳優陣は何と言っても、父親役のロバート・デュバルが光っている。彼は何の役をやらせても説得力がある。ある種の哀しみを背負った年老いたギャンブラーを好演している。父と子が、何度も亡くなった妻(母)の結婚指輪を懸けるシークエンスが面白い。
ベッドを共にしたその日にビリーのお金をくすねるハックは、父と同様にまともな人間関係が築けない。ただ、他の女性と違うものをビリーに感じたハックは、慣例を破り彼女に会うためバイクを走らせる。父親との愛憎の絡んだ描写に比べると、ハックとビリーの恋愛の描き方は甘い。

カジノのポーカー・ゲームは『カジノ・ロワイヤル』でもお馴染みだが、ほとんどがポーカー・シーンのこの映画で、あまりスリリングな感じがないのはどうしてだろう。主人公も人生を犠牲にしたギャンブラーにありがちな自暴自棄に走るといった風でもない。なんか、全体的にゆるいのである。
ハックは融資された1万ドルを擦って、脅しで水のないプールに投げ込まれる。顔に擦り傷を負ったエリック・ベネにキュンとした。この顔でビリーにポーカーの世界大会に出場すると告げると、You came all the way here to tell me that?(それを言うためにわざわざこんな遠いところまできたの?)といわれる。You're the only person I wanted to tell.(知らせたかったのは君ひとりだ)これでビリーの気持ちはハックに戻るのだろうか?

この映画には奇妙な賭けをする人種がいろいろで来る。2万ドルで「ホテルの男性トイレで1か月生活する」賭けをしたレスターは、男の格好のまま豊胸手術している。賭け事にまったく興味のない私には奇妙なだけである。

同じ賭け事を描いた映画で、『麻雀放浪記』という名作があることを思い出した。比べてみるのも一興か。

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