またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

笑えるオペラ『魔笛』

The Magic Fluet/2006/イギリス

シェークスピアを得意にしていたケネス・ブラナーが、モーツアルトのオペラに手を初めた。そういえば、先日亡くなったベルイマンも映画化している。残念ながら未見で比べようもないが、この喜劇をベルイマンがどう料理したのか気になる。ベルイマンは多くのオペラの舞台も演出しているのだが、どうして『魔笛』を選んだのだろう。
実は20年前、ベルイマン版ではないが、ストックホルムで『魔笛』を観ている。オペラは初めてで、切符があるからといわれて、演目も分からずに連れて行かれた。劇場のロビーでは、色とりどりの羽根を付けた人達が出迎えるという演出。音楽が始まって、『魔笛』だと分かった。スウェーデン語もストーリーもちんぷんかんぷんだったが、パパゲーノの歌にウキウキし、夜の女王のアリアに圧倒された。帰り道、連れに夜の女王のアリアを無理矢理歌って聞かせた思い出がある。
そんな話はさておき、映画である。
ケネス・ブラナーは、せっかく映像にするのだからと、オープニングにすごい事をやってのけた。およそ3分間ある『魔笛』の序曲に乗せて、序盤の映像をカット無しのワンシーンで撮っている。
綺麗な青空のショットから、パンダウンしていくと、広々とした草原が広がり、縦にジグザグの塹壕が何本か走っていて、その塹壕では兵士達が活動していて、草原でこの序曲を演奏している楽団兵へと続く(はっきりとは憶えてないが)なが〜い長回しである。序曲が鳴り終わったところで、拍手をしたい衝動にかられたが、舞台ではないので止めておいた。
元来、荒唐無稽な話だが、時代を第一次大戦の頃に設定したので、少し混乱した。神話を元にしたストーリーらしいが、時を超越したような内容だと思うのだが。
多くのオペラは単純な筋書きで、舞台美術と音楽が見せ場である。映像化してしまうと、なにか白々しく感じてしまうのは仕方ない。
それでも、美術セットは素晴らしいし、映像も凝っている。夜の女王が例のアリアを歌っている時の口の大写しは大好きだ。
それに何と言っても、モーツアルトの音楽に酔ってしまう。音楽監督のジェイムズ・コンロンの指揮のもと、歌手の面々もそれぞれ素晴らしい。

映画『アマデウス』にも、『魔笛』誕生前後のモーツアルトの様子が描かれている。劇団主催の友人のシカネーダーが脚本を書き、パパゲーノ役もやっている。下の映像は、モーツアルトが妻の母の剣幕に呑まれそうになったところから、夜の女王の着想を得た場面だが、実におかしい。