またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

我が青春のどくとるマンボウ

北杜夫氏が亡くなった。記憶に新しいスティーヴ・ジョブ氏と違い、どくとるマンボウこと北杜夫氏は、私にとって遠い過去の人だ。

私がどくとるマンボウシリーズを読んだのは、たぶん高校生時代だったと思う。
夏の暑い日に、夢中になって読んでいた思い出がある。『青春期』は北氏が旧制松本高校在学時の思い出を綴ったエッセイだったと思う。「思う」というのは、本が手元に無いのでうろ覚えなのである。

どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)

どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)

どくとるマンボウ青春記 (新潮文庫)

どくとるマンボウ青春記 (新潮文庫)

思い出してみれば、当時私は小説でもエッセイでも青春ものを好んで読んでいた気がする。
青春もののバイブル、サリンジャーライ麦畑で捕まえて』にはまり、庄司薫の『赤ずきんちゃん気をつけて』も読んだ。五木寛之は『青春の門』も、初期の短編も、エッセイも好きだった。茄子紺の制服を着て、高校の図書館に入り浸っていた日々だ。
人生経験の浅い分、好奇心に満ち満ちていた。本の中の他人の人生が面白かったのだろう。

どくとるマンボウシリーズは、当時はベストセラーだった。こんなに笑わせてくれる本は、私にとってたぶん初めてだったと思う。考えてみれば、私のユーモア好き、コメディ好きは北杜夫氏から来ていたのかもしれない。
その後、漱石の『我が輩は猫である』→内田百輭『第一阿呆列車』とユーモア文学の王道へと進んで行った。

躁鬱病を自認する北氏は、著作も不真面目ものと深刻もの?と両方書かれていた。
私は『楡家の人々』など、真面目な方の小説は一切読んではいない。訃報を聞いて、私に追悼文など書く資格などないが、遥か昔に少し齧ったことを思い出したまでのことだ。

それからすっかり私はどくとるマンボウを忘れてしまった。夢中になった本もたぶん実家に置いていったのだろう。
でも、数年前一度だけ北氏をテレビで拝見した。NHKの「我が心の旅」というシリーズでオランダを旅していらっしゃった。あるオランダの漁港を「スケベニンゲン」と呼んで喜んでいた。厳密には違うのだが、日本人にはそう聞こえる。北氏のユーモア精神は健在だった。
せっかくなので、NHKには追悼番組として再放送を願いたい。