またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

ライ麦畑に消えていったサリンジャー

 みんなもう知ってると思うけど、先月の何時だったか、終わり頃かな、J.D.サリンジャーが亡くなったんだ。それで追悼文とかなんとか、そんなことを書こうかと思ったんだけれど、なんだか忙しくってさ。サリンジャーっていったい誰?ていう奴がいたって仕方ないと思うよ。そいつを責める気にはならないね。『ライ麦畑でつかまえて』っていう小説をあいつが書いたのは、半世紀以上も昔の話だからね。当時はあまりに汚い言葉を使いすぎるとかなんとか言われて、禁書扱いされたりもしたんだ。まったくトンマなインチキ野郎ばっかりさ。


というわけで、野崎孝さんが訳した『ライ麦畑でつかまえて』の文体をマネしてみたのだけれど、不愉快だったらごめんなさい。数年前に村上春樹さんが『キャチャー・イン・ザ・ライ』というタイトルで新訳を出して話題になったりした。(でも、読んでない)サリンジャー信奉者は世界中に溢れていて、6500万部も売り上げ、毎年20万部売れ続けているそうだ。このバカ売れ小説の版権を持っている白水社は、『ライ麦畑』様様だろうね。


私がこの小説に出会ったのは、高校生の頃だった。暇さえあれば高校の図書館に入り浸っていたのだが、外国文学のコーナーの、お洒落な白い装丁の本が気になった。白水社の「新しい世界の文学」というシリーズだった。数冊あるうち、初めに手に取ったのが『ライ麦畑〜』だった。ちなみにこの文学全集の中にジョン・ノールズ著『友達』という名作もある。読んだことがある人がいればうれしいな。
そして、出会ってすぐ恋に落ちた。何回も読み直した。野崎訳の文章が頭に焼きつくほど。
『ナイン・ストリーズ』も大好きだ。『フラニーとゾーイ』も、もちろん読んだ。
"The Catcher in the Rye"をサリンジャーが書いたのは51年で、翌年には『危険な年齢』というタイトルで出版されているそうだ。野崎さんがつけたタイトル『ライ麦畑でつかまえて』は、今考えてもキャッチーで、これ以上巧いのは考えつかない。『ライ麦畑の捕手』というのもあったそうな。
アメリカ人で、日本人の英語に関して的確な指摘をするマーク.ピーターセン氏が、著書の中でホールデン少年がよく使う"phony"という語の訳を「インチキ」と訳しているのは間違いだと述べている。野崎訳も、村上訳も駄目だそうだ。そうかも知れないが、翻訳も創作の部分が大きいからね。私なんかは野崎訳が染み付いちゃってるしね。
















左の黄色く灼けた方は、大学時代に買い求めたもの。右のペンギン版は、今はもう店舗が無いが、銀座のイエナ洋書店で買った。英文はそれほど難しくはない。


小説の中のお気に入りのエピソードは、「セントラル・パークの家鴨』。
冬になって池が凍ったら、セントラル・パークのアヒルたちはどこへ行くのか?気になってしょうがない、っていう話。実際ニューヨークに帰ったホールデンは、タクシーの運転手にアヒルがどこに行くか知らないか?と聞いてしまう。案の定、馬鹿にされるんだけどね。

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

Nine Stories

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