またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

エリザベス Vs. ダイアナ 『The Queen』

ダイアナがクラッシュ事故で亡くなって、10年だそうだ。あの時のことはよく憶えている。ニュースを耳にした瞬間、何故か「殺された」と思った。当時ダイアナはアラブ系の富豪ドディ・アルファイドと結婚するのではないかと噂されていた。あまりにタイミングが良すぎて、陰謀説はなかなか消えなかった。
私はダイアナに特別な関心があった訳ではないが、それからしばらくはテレビの前から離れられなかった。まだ若く美しいダイアナの突然の死は、イギリスだけでなく多くの人々に衝撃を与えた。悲しみは人から人へとまたたく間に伝染していった。花束で埋もれたケンジントン宮殿。異様な雰囲気だった。
一体ダイアナのどこに人々を惹き付ける力があったのだろう?幼い時に両親が離婚し、愛されたいと願った夫の心は別の女性に向けられていた。常に愛を求め、ふたりの王子を愛し、弱者の心を理解した。ダイアナは慈善活動に熱心だった。特に地雷除去では実際に地雷原を歩いた様子が報道され、運動の力強い推進役を果たした。

この映画は、ダイアナではなく、その時のエリザベス女王を描いている。ダイアナは実際のニュース映像のみで、死後もイギリス王室を掻き回すダイアナに女王は悩まされる。
スティーブン・フリアーズがイギリス王室の映画を撮るなんて驚きだった。いつも労働者階級の人々を描いていたし、出世作はパンク野郎とパキスタン青年の同性愛ものだった。
監督と脚本のピーター・モーガンは、徹底的に取材を行った。王室、首相官邸関係者の話をもとに、映画に出てくるエピソードや会話は事実に近いそうだ。少し間抜けなチャールズ王子、辛辣なフィリップ殿下、驚く程元気な皇太后等、会話が活き活きしていて実に面白い。

ダイアナが事故に遭った時、王室一家はスコットランドのバルモラル城で静養していた。ダイアナは王室を離れた一般人であるという解釈のもと、一家はロンドンへは戻らず、広大な領地で気晴らしに鹿狩りをしていた。まったく一般人には理解できない行動である。沈黙したままの女王に、イギリス国民は反感を抱いて行く。そんな中、執任したばかりのブレア首相は民衆の心を敏感に察知し、女王にアドバイスしていく。

フリアーズ監督は、ダイアナに同情するでもなく、王室の内情も冷静に描いていて好感がもてる。