またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

『レンタネコ』ー心の穴ぼこは猫で埋めましょう

「レンタ〜ネコ、ネコ、ネコ。寂しい人に猫貸します」
夏の日差しが降り注ぐ土手を、リアカーを引いて何やら売り歩く女の人がいる。
何とリアカーの中には、数匹の猫が!
区分けされたカゴの中にちゃんと大人しく収まっているのが、可愛いやら、可笑しいやら。
レンタカーならぬ、レンタネコというわけだ。
英語だと、rent a car と rent a cat で一字違いだ。
映画の中でも、寂しいレンタカー屋さんが出て来るくだりがある。


かもめ食堂』の荻上直子監督が猫好きだろうことは察していたが、今回は直球ストレートで来た。
前作『トイレット』では、家族に愛される猫「センセー」が随所で活躍してはいた。

今回の『レンタネコ』は一応主役は人間の市川実日子だが、あきらかに猫の映画である。
猫の習性をよく知っている監督は、猫は演出できないからと猫の自由にさせていたとのこと。
どっしりした「歌丸師匠」はカゴの中にいることが多いのだが、猫たちはサヨコの平屋の中を自由気ままに遊び回っている。
エンドクレジットの文句がいい。
「動物たちに対しては、彼らの習性や意思を尊重して、映画製作をすすめました」
私も猫と接するときは、猫の意志を尊重することを心がけている。

猫たちは、それぞれ訳あって寂しい人間たちに貸し出される。
長年連れ添った夫と猫を亡くした老婦人。単身赴任で家族に忘れられそうな中年男。
お客が来ないレンタカー屋の受付嬢。
彼らの寂しい心の穴ぼこを埋めてくれる、かわいい猫たち。
サヨコが庭にいると、隣の奥さんに扮した小林克也が、毎回サエコをからかって去って行く。このルーティーンがとにかく可笑しい。どう見てもおばさんには見えないのだが。

また、『レンタネコ』は猫映画と同時に夏映画でもある。
おばあちゃんが残してくれたサヨコの平屋のセットが、縁側全開で夏の暑い感じが画面から滲み出ている。昔ながらの日本家屋が猫にとっても似合う。
荻上映画に欠かせない食べ物は、老婦人の息子の好物だったみかんゼリーと、サエコが庭でする、ひとり流しそうめんだ。
それに中学時代の保健室の仲間だった田中圭が、「夏と言ったらビールだろ」とビールを持って来る。中学の時は「夏と言えばアイスだろ」とアイスをせしめてきたのだが。

最後のエンドロールも、猫好きにはお馴染みのくるねこ大和さんのイラストで楽しませてくれる。
本当に猫好きにはたまらない映画だ。