立川キウイって何者?
台風の影響で何やら不穏な空気が漂う19日、「立川キウイの真打昇進の会」という落語会に行って来た。中野ゼロ小ホールは、ほぼ満席の入り。
正直のところ、立川キウイという変わった名前の落語家は全然知らなかった。立川志の輔の噺が聴きたくてチケットをとったのである。
師匠の談志が来ればもうけものと思っていたが、案の定、台風のせいで「どうも体が定まらない」というので欠席。5月の真打ち披露パーティの時は、ビン・ラディンが死んだため喪に服すとかで来なかったそうだ。
立川キウイは立川談志の直弟子で、前座16年!2つ目4年の20年目にしてやっと真打ちになったという人である。そのうち破門3回、師匠とのエピソードには事欠かないのだろう。その体験を『万年前座』という本に書いて、その本を読んだ談志が真打ちを許したという、真偽の程は分からない話がある。ロビーで売られていた本は早々完売した。物好きがいるものだ。
- 作者: 立川キウイ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/11/27
- メディア: 単行本
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折しもなでしこジャパンが世界一を決めて、日本中が沸き返っていた日である。「不屈の精神」「最後まで諦めない」と、前座苦節16年を揶揄するお祝い?の言葉が、兄弟子志の輔、客演昇太から贈られる。
ところで、この日の演目である。
十徳 こはる / 親の顔 志の輔 / 人生が二度あれば 昇太
〜仲入り〜
口上/ 読書日記 左談次 / 芝七 キウイ
こはるは女子ながら兄弟子談春の弟子で、キウイは何故かライバル視している。噺の腕前は残念ながらこはるが上手い。
念願だった志の輔落語。やはり噺がよく出来ている。上手いし面白い。
昇太はいつも座布団に固執する。飛び跳ねるので座布団の具合が大切なのか。座布団の破れを指摘し、口上の時の座布団が何故か楽屋の薄っぺらい奴だと暴露する。同期の志の輔に比べ自分の薄っぺらさを自嘲するが、みんなから「次期談志」と持ち上げられる。落語芸術協会理事なんですけどね。それにしても軽い。
口上というのは初めてだったが、面白かった。取り仕切る立川流重鎮左談次が、キウイが汗を拭いたの何のと、隣のキウイをしきりに扇子で叩く。いじられキャラのキウイと左談次のSが相まって見物だった。後の二人がのほほんとしていたので、余計に可笑しかった。
左団次は林家こぶ平、今の正藏の著書『通になりたい』の感想を語ったのだが、最後は本を床に叩き付け、ああ談志の弟子だなあと納得。
トリは真打ちキウイの登場。枕の談志とのエピソードは面白かったが、なかなか本題に入らない。しまいには、「帰るなら今ですよ」と言い出す始末。その訳は噺が始まって分かった。まあ帰る人がいても不思議ではない。でも帰った人はいなかった。古典の名作「芝浜」と「文七元結」を合せて、談志を登場させるという、非常に凝った構成。アイデアはいいと思うが、冗長でだれてしまう。肝心の談志が生きていない。もっと修行が必要?
諦めないキウイさんの将来はどうなのだろうか?左団次の言うように何時か化ける日が来るのだろうか。