またたびCINEMA〜みたび〜

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ルイス・バラガン邸を訪ねる A visit to Luis Barragan House 

WATARI-UM美術館/2009年9月9日ー2010年1月24日


今日は冬晴れの暖かい日だった。私たちに降り注ぐ、黄色い日の光が心地よかった。
午前中の授業を終え、ぽっかりと時間が空いた。神田川沿いを歩いて日仏学院まで散歩した。
友人と待ち合わせて、終了まじかの展覧会に行くことにした。

外苑前のワタリウム美術館で開催している、メキシコ人の建築家ルイス・バラガン邸を訪ねるという企画だ。
会場に着いて驚いた。列ができているのだ。そんなにルイス・バラガンが若い人に人気があるとは思わなかった。数年前、同じ建築家のブルーノ・タウト展に来たときには、まばらだったのだが。
会場も狭いし、会期が明日までというせいもあるだろう。でも地球の裏側のメキシコの建築家が、それほど知られていたとは、うれしい驚きだ。

私はメキシコシティのバラガン邸には行った事はない。友人は門前まで行ったが、お昼休みかなんかで中に入れなかったそうだ。


写真で憧れていた、世界遺産でもある、メキシコシティのバラガン邸が、東京のど真ん中に引っ越して来てくれた。
とはいっても、家具や調度品、絵画や本などごく一部ではあるが。庭に向いた大きな十字枠のガラス窓や(上のパンフの写真)、白い十字の木の窓など、日本で再現したものもある。会場には本人が好きだったジャズやクラシックの音楽が流れていた。無類の馬好きだったそうで、馬の水飲み場の設計もしている。

運のいいことに、ちょうどキュレーターの方の詳しい解説があり、空想で部屋の足りない部分を補えるかのような、素晴らしい説明だった。十字に切り取られた白い窓は、実際には窓の隙間から十字の形に光が洩れるのだが、日本の職人さんはきちんと作りすぎて、光が差し込む隙がなかったとか。

バラカン邸といえば、メキシコの抜けるように青い空に映えるきれいな色彩と、そこに注ぐ陽光が思い浮かぶ。
壁に塗られたピンク色と黄色いカーペットの対比が美しい。ピンクはブーゲンビリアの花の色であり、黄色はメキシコの大地の色だそうだ。
日本でこんな色を家につかったら、たちまち浮いてしまうだろう。でも、メキシコの暖かい太陽と青い空の下では、きれいな原色が町並みに溶け込んでしまう。
数年前、友人が住むメキシコの古都オアハカを訪れた時も、色とりどりに彩色した家々が連なる町並みに目を奪われた。本当に美しい。


  ルイス・バラガンの言葉(パンフより)
<ノスタルジー>ノスタルジーとは、個人の過去に対する詩的な認識のことです。芸術家にとっては、自分自身の過去は、想像力の源となります。建築家も、自らのノスタルジーの啓示に、耳を澄ませてみなければなりません。

<静けさ>建築を特別のものにするとき、それは音楽になります。その音楽は、水で演奏されます。壁は、通りの攻撃的な空間からも静寂をうみだします。静寂から始め、水で音楽を作り始めます。そして、音楽は私たちを満たします。