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またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

People have the power―『パティ・スミス:ドリーム・オブ・ライフ』

Patti Smith:Dream Of Life/Steven Sabring/2008/米

パティ・スミスについて、そんなには知らない。ファンという訳でもない。CDも持ってない。
ただ、パティ・スミスのライヴを体験したことがある。引退していた彼女が音楽シーンに復帰して、1997年に初来日した時だ。
友人が余分に持っていたチケットで、たまたま見たのだった。恵比寿のライヴ会場は狭い上にオール・スタンディングだった。もうすでに30代だったので、体力的に不安だった。なにせパンク・ロックの女王である。とはいってもパティも50だし、せっかくの機会を逃す手は無い。
案の定、会場はすし詰め状態で前の方へ押しやられ、タテノリの若者に親指を踏まれて痛い思いをした。映画の中でもジャパン・ツアーのシーンが写っていた。パティに向かって手を伸ばす群衆の中に、おもわず自分を探してしまった。
50歳と見くびっていたパティ・スミスは、とんでもなく元気だった。なにか神々しいオーラがあり、彼女が手を振りかざして歌う姿に、思わず手を挙げて応える自分にびっくりした。
スプリングスティーンと共作した「ビコーズ・ザ・ナイト」で最高潮に盛上がった。
このライヴを見たことは、今では大切な思い出となった。


映画はパティ・スミスの10年間をランダムに追っていて、ライヴの様子とプライベートの映像が交互に出てくる。
伝説の写真家メイプルソープと出会った頃の映像もあり、パティの今とは想像もつかない可愛い声に驚く。
パティはいつでも飾らず自然体だ。たぶん化粧もしていない。そんなパティは魅力的だ。
両親の実家を訪れたパティは、まるで娘に戻ったかのようだ。ああ、普通の女の子だったんだなと思う。実家の犬はたぶんボクサーかなんかの種類で、ヨダレの話が面白い。
何回も写し出されるパティの部屋は、物が脈絡もなく直に床に置かれている。窓辺には猫がいる、
パティは猫好きらしく、墓地にいた猫も彼女にまとわりついていた。


パティはメイプルソープとの運命的な出会いを始めとして、華やかな交友関係がある。
ウィリアム・バローズやギンズバーグなどの詩人とも親しく、パティも詩を書く。映画ではランボーの墓を訪ねている。
劇作家で俳優のサム・シェパードは若い頃一緒に暮した仲だ。何の屈託もなく軽口を叩きながらギターで合奏する姿がいい。


プライベートとは一変して、ライブは激しい。今年も野外フェスに来日したそうだが、どこまで元気なのだろう。劇中で流れるブッシュ元大統領を糾弾する歌は過激だ。あまりのストレートさに驚く。


映画の中でパティは亡くなった親しい仲間の喪失感を語る。
89年には盟友のメイプルソープ、90年にはメンバーのリチャード・ソールが逝った。94年には世界的にも衝撃だったカート・コバーンの自殺、夫フレッド・スミス、弟のトッドが相次いで亡くなるという悲劇に見舞われる。
しかし、パティは殻に閉じこもるのではなく、積極的に活動する道を選んだ。97年にはウィリアム・バロウズに捧げるアルバム『ピース・アンド・ノイズ』を発表した。
バロウズといえば謎の多い人物だが、なぜか人を惹き付ける魅力を持っている。ひたすら慕うパティに向かって「俺はホモだ」といなす。
そのバロウズを題材にしたクローネンバーグの映画がある。興味のある方はどうぞ。

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ピース・アンド・ノイズ

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