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またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

音楽はすべての人を救う―『路上のソリスト』

The Soloist/Joe Wright/2009/America

 I knew him playing the violin on a dairy crate in the moning sun,,,
Every night my friend Nathaniel tucks his instruments away and lays
his head amang the predetors, hustlers and drunks,,,
 彼はいつも朝日を浴びながら牛乳箱の上でヴァイオリンを弾いていた。
 毎晩、我が友ナサニエルは楽器を仕舞い込むと、
 略奪者や売人や酔っ払いがたむろする路上にその身を横たえるのだった。


この映画は去年の制作だが、「今はホームレスの映画を公開するのにふさわしい時期ではない」との理由で半年延期になった。これには原作者のスティーブ・ロペスは本気で怒ったそうだ。
まったくふざけた話だ。この映画は社会問題を扱ってはいるが、音楽で繋がったふたりの男の友情を描いている。


ロサンジェルス・タイムスの人気コラムニスト、スティーヴ・ロペス(ロバート・ダウニー・Jr)は、ある朝ベートーベンの銅像の下で弦が2本しかないヴァイオリンを奏でるホームレス、ナサニエルジェイミー・フォックス)に出会う。
名門ジュリアード出身の音楽家が何故ホームレスに?
ナサニエルのことを書いたコラムは大変な反響を呼び、感動した読者からチェロが贈られてくる。
ナサニエル・エアーズは、確かにジュリアード音楽院でチェロを学ぶ、将来を嘱望された若者だった。しかし在学中に統合失調症を発症し、月日は流れ流れて、いつの間にか、L・Aの路上で2本弦のヴァイオリンを弾いていたという次第だ。


ロペスはナサニエルにチェロを提供し、ロサンゼルス交響楽団のリハーサルに連れ出してベートーベンの3番「英雄」を聴かせる。(会場はウォルト・ディズニー・コンサートホール、設計は天才フランク・ゲーリー。ふたりがナサニエルの所帯道具一式を載せたカートを引張っていくシーンで、後ろに見える奇抜な建物がディズニーホール)
危険なストリートから救い出そうと自立支援用のアパートに連れていくが、簡単には受け入れてもらえない。
心の病を抱えたナサニエルの予測不可能な行動に、翻弄されるロペス。


YOU TUBEの映像は、本物のロペスとナサニエルだ。ベートーベンの誕生日に仲間たちと演奏するナサニエルは楽しそうだ。


監督のジョー・ライトはイギリス人で、アメリカで映画を撮るのは初めてで、勝手が違うのか正直いまひとつの感がある。前2作が文芸大作で、特に『つぐない』が素晴らしかっただけに、今回も期待した。実話を元にしたストーリーという初めてのチャレンジで、誠実に撮っていて好感がもてる。
とても良かったのは、実際の現場である、ロサンゼルスのスキッド・ロウ地区でロケをし、本物のホームレスの人達がエキストラで出演している。そのため怖い程のリアリティがある。
実際アメリカでは、心の病を抱えたホームレスの人の確率が高いと聞いている。都会のホームレス問題は根深くて一朝一夕には解決しない。


ロペスもナサニエルの問題に段々嵌っていく。きずなも深まっていく。しかしふたりの関係は一歩通行ではなく、気が付けばロペスもナサニエルに影響され、変化していた。
路上のソリスト』は、音楽が取持つ、希有でかつ貴重な友情物語である。