またたびCINEMA〜みたび〜

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仏像鑑賞は楽しい。―阿修羅展

若い女性の間で阿修羅像が大人気とか。その奈良興福寺の阿修羅展もこの日曜日で東京を去る。阿修羅様、御一行はこの後福岡を廻るそうだ。


上野の阿修羅展に行ったのは、豚インフルエンザの騒動が最高潮だった3週間前だ。
40分待ちをものともせず、多くの善男善女が仏像界のアイドルを一目見ようと上野に集まって来た。そういえば阿修羅像は、昔から教科書に載っていた図録のなかでダントツの人気を誇っていた。今に始まったことではない。
いろんな人が阿修羅像に魅入られている。海洋堂が作った体長12cmのフィギュアは早々に売り切れたそうだ。ちょっと欲しかった。九州では販売するのかな?


そもそも興福寺聖武天皇の妃、光明皇后が母の供養のため1300年前に建立したもの。お寺は7度も罹災し、その度に仏像は持ち出され難を逃れたそうだ。
インドの神々の像である八部衆と釈迦の十代弟子が見どころだが、邪鬼をむんずと踏み付けている四天王の像も面白い。


八部衆のひとりである阿修羅だけが特別なステージで、360度くるりと廻りながら、押しあいへし合いしながら見られる。
阿修羅像などは、脱活乾漆造(だっかつかんしつづくり)という技法でつくられており、中は空洞である。火事の際などは容易に抱えて持ち出せたため、今に残っているのであろう。
像の表面は木の粉を混ぜた漆を塗っていて、憂いを帯びた繊細な表情を作っている。
阿修羅は顔が3つで腕が6本だが、美少年といわれる顔の表情はそれぞれ違い、左側は唇を噛みしめている。身長は153cmで痩身、小顔の8頭身。仲間が鎧のような衣装なのに、ひとり薄衣の膝下パンツをはいている。残念なことに魅力的な細い腕だが、手の指先が失われていた。
素直にその美を愛でるのもいいし、その憂いに思いを馳せるのも、それは自由だ。


八部衆はみんな150cm前後で、鳥の頭部を持つ迦楼羅(かるら)など、その姿に異形が混ざった神々である。それぞれ少年の面影や目の表情など興味ぶかく、自分のお気に入りを見付けるのも楽しい。十大弟子の方は老若いろいろで、老僧のシワなども見事だ。微かに色が残っているところもあり、1300年の長さを思うと感慨深い。


「ブルータス」の仏像特集。これから仏像鑑賞を始める人にお勧め。

BRUTUS (ブルータス) 2009年 4/15号 [雑誌]

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仏像鑑賞ブームの草分けみうらじゅん氏の本。「阿修羅ファンクラブ」会長も務める。
見仏記 ゴールデンガイド篇