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またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

往年のフランス映画に酔う―『肉体の冠』

Casque D'or/ジャック・ベッケル監督/1951/モノクロ/スタンダード/フランス

肉体の冠 [DVD]

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先月、有楽町の朝日ホールで「フランス映画の秘宝」という企画をやっていて、クロード・オータン・ララの『パリ横断』(1956)と、モーリス・ピアラの『刑事物語』(1984)の2本を観た。
会場は驚く程年配の方でうまっていて、若者たちより反応がいいのに驚いた。笑うべき時は笑い、驚いたときは素直に驚く。最近の観客はお行儀が良すぎるのだ。映画の愉しみ方は昔の人の方が上手い。
刑事物語』は期待はずれだったが、『パリ横断』はよく出来たコメディだった。機会があったら観てほしい。


その「フランス映画の秘宝」のつづきとして、渋谷のシネマ・ヴェーラでアキム・コレクションと題して16本の往年の名画を上映している。

ジャック・ベッケルの大ファンとしては、未見の『肉体の冠』を見逃す訳にはいかなかった。
ジャック・ベッケルは、それこそフランス映画の秘宝、ジャン・ルノアール監督のもとで助監督をしていて、大きな影響を受けている。作風も共通点が多い。

冒頭、川でボート遊びに興じる男女が出て来て、バールでダンスを踊り出す。まさにルノアールの世界そのものだ。『ピクニック』や『恋多き女』なんかのシーンがだぶって見えてくる。それだけでもう嬉しくなってしまう。
娼婦マリー(シモーヌ・シニョレ)と大工マンダ(セルジュ・レジアニ)の恋物語だ。マンダは、マリーをめぐってヤクザと警察から追われる身になる。脱獄映画の傑作『穴』でミステリーが上手いのは知っていたが、マンダが警察から逃げるシークエンスの切れの良さ。悪女と見せかけて、一途に愛をつらぬくマリーの、大胆な行動に驚かされる。特にマンダの最期を見届けるラスト・シーンは唸った。
魔性の女、ファム・ファタルを演じたシモーヌ・シニョレは、この作品が出世作だそうだが、あの存在感は若い時からのものだったのね。顔が男優より大きいのが気になっちゃった。