またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

美の狂乱―目黒雅叙園 源氏物語×百段階段


先週の土曜日、雨がそぼ降る中、目黒雅叙園に行ってきました。
目黒には庭園美術館があるのでよく来るのですが(寄生虫博物館も有名だが未体験)、行人坂という急な坂を初めて下りました。林檎や蜜柑を転がしてみたくなる急坂です。隣り合わせの権之助坂の方は学生時代によく利用していましたが。
権之助坂の由来は、目黒不動尊に詣でる人たちの通り道である行人坂があまりに急だったために、菅沼権之助という名主が、幕府に断り無く緩やかな坂を隣に切り開いたため、お咎めを受け死罪になったといいます。私はこの話を「タモリ倶楽部」で知りました。この番組を何十年も見ていますが、初めて勉強になりました。


目黒雅叙園は結婚式で有名なホテルですが、知合いにここで挙げた人がいなかったもので初めて行きました。
行ってみてびっくり。全体的に装飾過剰なのです。トイレに入ってびっくり。小川に赤い橋の欄干なんかあり、無駄に広い。個室に入ってまたびっくり。天井に美人画が描かれていました。



ところで何しに行ったかというと、普段未公開の旧建物部分の百段階段を公開しているというので、のこのこ出かけて行ったのです。
目黒雅叙園は創業80周年のイベントで、人形作家の辻村寿三郎さんの源氏物語を中心とした人形を、古い部屋に飾ろうという趣向です。
寿三郎さんといえば、私達世代にとっては『南総里見八犬伝』です。毎日学校から帰ってテレビにかじりついて見てました。今でもテーマソング歌えます。当時の人形も飾ってありました。
百段階段は。99段ある階段に沿って作られた7つの部屋(開かずの間もひとつ)を持つ木造建築です。国の有形文化財の指定を受け、当時は宴会場等に使用していましたが、老朽化が進み、安全性に不安があることなどから普段は閉じられています。
  
友人が入るのをためらったという唐獅子牡丹のエレベーターで旧館へと進みました。
ずうっと上の方まで続く細長い階段の下に立った時、なんか黴臭い、おどろおどろしい所に足を踏み入れてしまったという気がしました。なんか重苦しい空気が立ち籠めていたようでした。
7つの部屋はそれぞれ違ったテイストで装飾され、建具や内装は贅を尽くし、壁や天井には有名な画家が絵を描いています。
上の写真は、ふたつ目の「魚礁の間」です。7部屋のなかで、とりわけ装飾過多でゴテゴテ、派手派手です。絢爛豪華な床柱は、海と山のモチーフのレリーフに極彩色を施こしてあります。ところどころ剥がれ落ちているところが退廃を感じさせてグッときます。過剰で悪趣味一歩手前です。
この部屋でも結婚披露宴をしたそうですが、花嫁さんにはいい顔をされなかったそうです。どんな美人でも、部屋に負けてしまいますからね。

私の趣味だったのは、一番下にある、螺鈿で囲われた「十畝の間」でした。荒木十畝の天井画が名前の由来。贅沢ですが、一番趣味がよろしい。

昔は大浴場があったという雅叙園ですが、「昭和の竜宮城」といわれ、『千と千尋の神隠し』の銭湯のモデルともいわれています。
ああ、お腹いっぱい。