またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

戦慄のアカデミー賞受賞作―『闇へ』

Taxi to the Dark Side/アメリカ/2007
この間発表されたばかりの80回アカデミー賞のドキュメンタリー部門を獲得した『闇へ(Taxi to the Dark Side)』を、早速NHKが放映してくれた。最近問題の多いNHKだが、こういうことがあるので、私は受信料を払っている。詳細はこちらをクリック→AFPBBNews
今、アメリカの次回大統領候補者争いが白熱しているが、それにしても、7年前にジョージ・W・ブッシュが選ばれていなかったらとよく考える。アメリカ人は大変な間違った選択をしたのではないか?ゴア氏が大統領になっていたら、京都議定書撤退はもちろん、イラクにも侵攻していなかったと思う。
このドキュメンタリーを観て、現政権の非道さに今さらながら怒りをおぼえた。
2002年にイラクの捕虜収容所で獄死した、あるタクシー運転手の話から映画は始まる。彼はまったくの無実だったのだが、捕虜虐待写真で有名になったアルグレイブ刑務所や、キューバグアンタナモ基地でも、大量の犠牲者が出た。そしてまだ裁判も受けずに勾留されている無実の人がたくさんいる。そこでは捕虜尋問の際、酷い拷問が行われているのだが、何故か拘留者には捕虜虐待を禁じるジュネーブ条約が適用されないという。
アメリカが「イラクが生物化学兵器を開発している」という嘘の報告を国連でした時、実はこの情報は、捕虜を水責めにし無理矢理引き出したものだった。水責めはスペイン宗教裁判で用いられた古典的拷問で、違法なだけでなく、無理に引き出した告白の信憑性も疑わしい。水責めを許可したのはラムズフェルド元国防長官。これでイラクアルカイダの繋がりが立証出来たとして、証言したのはパウエル元国務長官。彼はのちに騙されたと知って、人生最大の汚点だと語っている。
ジュネーブ条約で禁止されている拷問を誰が許可したのか?何故証拠もないまま何年も勾留できるのか?例の世界を騒然とさせた写真のせいで、虐待を実際に行った実行者は裁判で有罪になった。しかし上官は昇進までしている。
ギブニー監督は権力の中枢まで迫って行く。辞めさせざるを得なくなったラムズフェルドだけでなく、チェイニー現副大統領、ブッシュ現大統領の発言から、収容所での拷問容認が明らかになっていく。ブッシュは戦争犯罪人を回避するため法律をねじ曲げているそうだ。セグウェイで転倒したり、プリッツェルを喉に詰らせたりと、笑いを提供してくれる大統領だが、馬鹿のふりして、やっていることは罪深い。敬虔なクリスチャンなんですよね?
レックス・ギブニー監督がアメリカ人だということに希望を感じる。監督もインタビューで希望はあると語っていた。アメリカは即刻、違法な勾留、尋問を中止して捕虜を釈放して欲しい。それから、犬を拷問に利用するのは止めて欲しい。犬に罪はない。
グアンタナモから生還したイギリス人の映画『グアンタナモ、僕達の見た真実』も是非見て!

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