またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

桐生の澄んだ空気、そのままの映画―『人のセックスを笑うな』

タイトルはエディソン・チャンへの当てつけではありません。偶然です。

人のセックスを笑うな (河出文庫)

人のセックスを笑うな (河出文庫)

とにかく桐生の町が良い。土手で自転車のふたり乗り。田んぼの真ん中を走るバイク。ポツンとあるバス停となかなか来ないバス。向こうの方に画面をゆっくり横切ってゆく電車。その上を一羽の鳥が逆方向に飛んでった。地方で育った者として、のどかな風景にノスタルジーを感じる。
この空気は知っている、という感じだ。時間がゆったり流れている。
この町の美大の生徒3人(みんなが片思いというところが青春)に、新任の教師が現れて小さな波乱が起きる。学生の松山ケンイチが、20才年上の永作博美に恋をする。永作はまったく悪びれず、自然な演技で、いやらしくない。むしろほほ笑ましい。松山を慕う蒼
井優の一途さもいい。
動物も出てくる。冒頭のヒッチハイクのシーンで、夜の道路を横切る犬。松山演じるみるめが酔いつぶれる店の前で、もらったエサを延々食べ続ける大食漢の猫。
ロバの出ている映画が好きというユリ。ロバはこの映画の重要なモチーフになっていて、いたるところにロバのおもちゃがある。ユリのリトグラフも、ロバがモチーフのファンタジックな絵だ。動くロバも出てくる。ふたりの初デートのファミレスの窓越しに、葉っぱをむしゃむしゃ喰うロバ。ロバは哀愁と滑稽さがあって大好きだ。
吹き出してしまったシーンがある。ユリの夫役の猪熊さんこと、あがた森魚信玄餅の食べ方について講釈するところ。彼は天才だ。
それからじいちゃんとして、桂春団治が出てくる。あの放蕩で有名な人の息子でしょうか?飄々とした味がある。