桐生の澄んだ空気、そのままの映画―『人のセックスを笑うな』
タイトルはエディソン・チャンへの当てつけではありません。偶然です。
- 作者: 山崎ナオコーラ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2006/10/05
- メディア: 文庫
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この空気は知っている、という感じだ。時間がゆったり流れている。
この町の美大の生徒3人(みんなが片思いというところが青春)に、新任の教師が現れて小さな波乱が起きる。学生の松山ケンイチが、20才年上の永作博美に恋をする。永作はまったく悪びれず、自然な演技で、いやらしくない。むしろほほ笑ましい。松山を慕う蒼
井優の一途さもいい。
動物も出てくる。冒頭のヒッチハイクのシーンで、夜の道路を横切る犬。松山演じるみるめが酔いつぶれる店の前で、もらったエサを延々食べ続ける大食漢の猫。
ロバの出ている映画が好きというユリ。ロバはこの映画の重要なモチーフになっていて、いたるところにロバのおもちゃがある。ユリのリトグラフも、ロバがモチーフのファンタジックな絵だ。動くロバも出てくる。ふたりの初デートのファミレスの窓越しに、葉っぱをむしゃむしゃ喰うロバ。ロバは哀愁と滑稽さがあって大好きだ。
吹き出してしまったシーンがある。ユリの夫役の猪熊さんこと、あがた森魚が信玄餅の食べ方について講釈するところ。彼は天才だ。
それからじいちゃんとして、桂春団治が出てくる。あの放蕩で有名な人の息子でしょうか?飄々とした味がある。