またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

ちょっとキツイ、フレンチ・ノワール―『裏切りの闇で眠れ』

TRUANDS/2006/フランス
実は先月試写会の券をもらって観ていた。只で、しかもパンフまでもらって申し訳ないのだが、あまり面白くなかった。ギャング映画なので暴力描写があるのはあたりまえだが、そればかりが目立ってしまった。
『ゴッド・ファーザー』と比較するにはスケールが違いすぎるとしても、話やテイストが似ている、最近のイギリスもの『レイヤー・ケーキ』の方が断然面白い。
とはいえ、主演のクール・ガイを演じたブノワ・マジメルがいい。ブノワ君は、ほんの少年の頃の『人生は長く静かな河』から見ているが、今回はオールバックのオジさんで、たくましい上半身裸の姿も披露している。
この一匹狼のフランクという男のキャラクターは、時代も場所も違うが、コーエン兄弟の『ミラーズ・クロッシング』でガブリエル・バーンが演じたトムを彷佛とさせる。コーエン兄弟はこのストーリーを、ハメットの小説『血の収穫』『ガラスの鍵』からヒントを得たと言っている。ギャングの抗争のただ中を涼しい顔で切り抜けていく役だ。黒澤明も『用心棒』で拝借してますよね。
フランクがアフリカの街の雑踏に消えて行くラストシーンで、マリアンヌ・フェイスフルの歌が流れてくる。その歌詞に「影なき男(The Thin Man)」というフレーズが出てくる。といえば、どうしたってハメットの世界だろう。