またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

ユニークなドキュメンタリー作家ニコラ・フィリベール―『動物、動物たち』『行け!ラペビー!』

ニコラ・フィリペールというフランス人が撮ったドキュメンタリー作品をふたつ観た。同時上映で、かつてのツール・ド・フランスの優勝者ロジェ・ラベピーの『行け!ラベピー』と、「フランス国立自然史博物館」の改修で蘇る剥製の動物たちを撮った『動物、動物たち』だ。
1937年のツール・ド・フランスの王者ラペビーは、77才になった今でも毎日自転車に乗り続けている。自転車への愛と人生哲学が本人の口から語られる。制作者側は何のコメントもせず、淡々と自転車に乗る彼を写すだけだが、いつのまにかラペビーが好きになっている。
四半世紀もの長い間閉鎖していた自然史博物館。歴史的建物だがそうとうボロイ。倉庫の動物の剥製もみすぼらしいことこの上ない。建物の改修とともに、動物たちを生き返らせる大プロジェクトが始まった。多くの動物たち、昆虫、魚たちがきれいになっていく。ここでも作者は何の論評も付け加えない。学者たちや剥製師などのスタッフの言葉と、なにより動かない数多くの動物たちが生き生きと物語る。図鑑好きの人はかなり楽しめること請け合い。
ドキュメンタリーの多くは、映像からあるテーマを浮び上がらせるという手法だが、ニコラ・フィルベールの切り口はとてもユニークだ。特にテーマも決めず、もちろん何の先入観もなく、映像を淡々と撮って行く。そこから観客は自由に何かを感じ取っていく。
まだ2作品しか観ていないが、もうひとつの長編『かつて、ノルマンディーで』は見に行くつもり。