またたびCINEMA〜みたび〜

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もう終わっちゃうの?―『ヴィットリオ広場のオーケストラ』

L'orchestra di Piazza Vittorio/2006/イタリア
渋谷のイメージ・フォーラムで単館上映している『ヴィットリオ広場のオーケストラ』が、こけてしまったらしく、現在レイトショーをやっているものの、30日の金曜日で終わってしまいます。私は先週駆け込みで7時の回を観ましたが、小さい映画館が、すかすかでした。
とはいうものの、このドキュメンタリーは結構面白かったんですよ。ローマ版『ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ』ともいえる佳作でした。
ローマのテルミニ駅(往年の名画『終着駅』の舞台)の近くにあるヴィットリオ広場。この周辺は地元の人よりも、世界中から集まって来た移民の人達が多く住むようになって来た。
音楽家のマリオと映画作家のアゴスティーノは、共にローマっ子ではなく地方出身者だが、移民排斥に揺れる街をなんとかしたい、と考えていた。広場の近くには由緒ある、古いアポロ劇場が存続の危機にあった。ふたりは移民達からミュージシャンを集めて、この劇場でコンサートを開きたいと考えた。
最初、やみくもに声を掛けてみたものの、楽器を弾く者も、歌が歌える人も見つからない。少しづつ口コミで仲間を増やしていく過程が面白い。ヴァイオリンなどの一般的な楽器から、ジプシー音楽でお馴染みのツィンバロンやインドのタブラ、琵琶の親戚ウードなど、世界中のヴァラエティに富んだ楽器の数々が見られるのが楽しい。アフリカのチュニジアやインドの歌い手は素晴らしい喉を持っている。
アフリカ、ヨーロッパ、アジア、南北アメリカからローマに集まってきた人達。言語も音楽も様々だ。こんなに個性豊かな音楽家たちが一緒に演奏できるのかしら?音楽監督のマリオとマネージャーも兼ねるアゴスティーニは大変だ。練習場の確保、ビザの問題、仲間同士のいざこざも乗り越えて、演奏会の日がやって来た。会場はあふれんばかりの盛況だ。演奏は素晴らしかった。いままで聴いたこともない音楽会だった。民族、国籍を乗り越えた斬新な試みだった。「すべての道はローマに通ず」とはよく言ったものだ。かねがね「ワールドミュージック」という音楽のジャンルってなんだと思っていたが、まさにこれが「ワールドミュージック」かも知れない。
このオーケストラは今も存続し、しかもメンバーが増えているそうだ。