母の死
最愛の母が亡くなった。今年の桜を見ずに逝ってしまった。故郷の長岡は、寒が戻り、雪が時々舞っていた。
思えば働き詰めの一生だった。家業の酒屋と家事で、子供の私からみても大変な忙しい毎日だった。我侭な父に従い、子供4人を育て、孫の世話までして、化粧とは無縁の人だった。周りを気遣い、常に自分を最後にするようなところがあった。本当に優しかった。
遺品を整理していて、母が折々書き綴っていた俳句が出てきた。季語がないので正確には俳句とはいえないけれど、伝票や領収書の裏に走り書きしてあるのが母らしい。
濃い青の着物を着せて、化粧をしてもらった。紅いほお紅と口紅をさしたら、「おばあちゃん、かわいい」という声があがった。愛読していた藤沢周平の本と、歌人である姉の歌集を棺に入れた。
頬染めて 乙女にもどらむ 死化粧
眠猫
(写真は梅でも桜ではなく去年撮った木瓜です。)