岩井俊二+市川崑=『市川崑物語』
いつのまにか、市川崑の映画が好きになっていた。はじめて観たのはどの作品だっただろう?
>>歳の差なんて関係ない この世の中で一番話の合う人に出会ってしまった 岩井俊二<<
岩井俊二監督がチェーンスモーカーの巨匠と出会った時、マニアックな照明の話を延々したそうだ。照明の魔術師は、若い監督に「君の基本は逆光だね」と言った。
本当に話の合う人に出会う事は、稀であり、幸せである。一緒にいる間は至福の時が流れる。
『Love Letter』の岩井俊二監督が憧れの監督の半生を取材して創った『市川崑物語』。
1915年に伊勢の呉服屋に生まれたぼんぼんは、後世スタイリッシュな映像美で知られる映画監督となる。女に囲まれて育った少年は、女の人を実に美しく撮った。何故か一方、男は頼りない優男が多い。
市川監督の多くの作品の脚本家和田夏十は、映画でも私生活でもよきパートナーだった。残念ながら病気で早く亡くなってしまうのだが、映画では多くの写真と共になっとさんへの愛が語られる。
すべて観ている訳ではないが、またたびCINEMAではふたりの最高傑作を『黒い十人の女』と決めてしまおう。映像も内容もモダンですよ。船越英二がすごくおかしいし。
そういえば当サイトのタイトル「またたび」には、市川監督の異色時代劇『股旅』への愛もちょっとだけ入っているんだよ。
水木洋子の脚本『おとうと』は、幸田文の原作も大好き。川縁を着物姿の岸恵子がすたすた歩くシーンが好き。伝説のカメラマン宮川一夫の銀流しというセピア色の映像で有名。十年以上前、この映画を主演の岸恵子と監督の舞台挨拶付きで観に行きました。監督の煙草と、岸恵子の細い足を憶えています。
監督初のカラー作品で花街が舞台の『日本橋』は、粟島千景、山本富士子、若尾文子がハッとする程美しい。
吉永小百合の演技が見物の『細雪』は、京都の桜、四姉妹の着物等、女性は特に必見!
そうそう、猫好きの監督は『我輩は猫である』も撮っている。もうひとりの猫好き伊丹十三が迷亭役で出演している。原作の駄猫ではなく、美しい黒猫だったように記憶している。
見逃しているのもので、どうしても観たいのが『ぼんち』。市川雷蔵のダメ男ぶりが見物かな?