またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

クライム・ストーリーの傑作『ヴェロニカ・ゲリン』

ヴェロニカ・ゲリンという人は驚くべき人である。
ダブリンの実在の新聞記者が、スラム街の子供達の麻薬禍に心を痛め、ギャングの裏社会に単身潜り込み、麻薬組織の元締を探り当てた途端に暗殺されるまでを描いている。
大筋の出来事や記録に残っている部分は事実のままだが、もちろん創作の部分もある。自宅への銃撃に始まって、腿を打ち抜かれ、麻薬王ジョン・ギリガンから顔面を殴打され、息子を誘拐すると脅される。脅迫には怯えるのだが、取材を止める事はしなかった。観てるこちらまで、痛さに堪え難くなる。彼女の脅しに屈しない勇気はどこから来るのだろう?
何と言っても、ヴェロニカ役のケイト・ブランシェットが素晴らしい。犯罪者ギリガン役、トレイナー役の二人の俳優とのトライアングルで”死のダンス”を踊ってみせる。
ヴェロニカの取材の過程で垣間見える、実在の犯罪者の姿と裏社会の実像が本当に面白い。クライムストーリーの傑作だ。
映画は彼女を聖女として描くことはしていない。車のスピード狂であり、交通違反チケットコレクターで、家事をほとんどしなかった。愛情溢れる家で育った彼女は、優しい夫とかわいい息子に恵まれる。3人がジェイミー・カラムの歌でダンスをするシーンはすごく良い。顔を殴られた後、母親の所にいく場面は泣いてしまった。彼女が家族にどれだけ恩恵を被っていた事か。
ヴェロニカの死後、法律が改正され、犯罪も摘発された。犯罪率も少し低下したそうだ。
The pen is mighter than the sword.