またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

クラシカルなラブ・コメ 『プライドと偏見』


べッツィー(Pride & Prejudice/2005/英)






待ち焦がれていた映画『プライドと偏見』を観て来ました。
ジェーン・オースティン(1775〜1817)原作の文芸もので、十年程前にイギリスのBBCがTV化して大
ブームになったようです。実は私もNHKで放映されたものを観て、ジェーン・オースティン作品に興味を持ちました。私はそれまで、彼女の作品のタイトルから勝手に難解な文学と「偏見」を持っていました。だって、『高慢と偏見』、『分別と多感』なんて、とてもコメディとは思えませんもの。

テレビ版でMr.ダーシーを演じたコリン・ファースは、はまり役とされ、全英の女性たちのハートを掴み、『ブリジット・ジョーンズの日記』(『高慢と偏見』の現代バージョンで、ちなみに製作は同じワーキング・タイトル。)でもダーシー役を演じ、全女性の憧れの的になっています。でも私は『アナザー カントリー』からのコリン・ファースの筋金入り?のファンです。
今回の映画化では、監督はこれがデヴュ−作のジョー・ライト、主役のエリザベスをキーラ・ナイトリー(原作では美人ではないが魅力的としているので、監督は最初彼女を美人すぎると考えたようです。)に、Mr.ダーシーには馴染みのないマシュー・マクファディン。はたして、マシューはコリンを超える事ができるのでしょうか?


高慢と偏見

作者のジェーン・オースティンは200年程前に活躍したイギリスの小説家です。作品のテーマは紆余曲折を経て結婚に至る男女の恋愛模様で、主人公達を廻る貴族社会が生き生きと、風刺と皮肉もこめて描かれています。「世界一平凡な大作家」と形容され、漱石もその写実を絶賛しています。なによりもイギリス国内で大変な人気があります。

映画に戻ります。、そう裕福でもない貴族べネット家には5人の娘がおり、隣に独身のお金持ちのMr.ピングリーが越してくるところから話は始まります。姉妹はピングリー家の舞踏会に招待され、長女のジェーンとピングリーは互いに好意を抱きます。友人の気難し屋で大金持ちのMr.ダーシーは踊る程の女性はいないと周りを見下した様子です。ジェーンの妹のエリザベスと踊ったらとピングリーに言われても、たいした事は無いと暗に断ったのをエリザベスが小耳にはさんでしまいます。
恋愛の始まりとしては最悪の出足です。気位の高いダーシーを「高慢」と嫌い、実は誠実な彼に「偏見」を持つエリザベス。この後、物語は意外な方向へ転換していきます。

ここで、気に入ったセリフを少し選んでみました。
べネット家の家督を相続する事になっている従兄弟の牧師コリンズ(当時女性に遺産相続権が無かった。)に求婚され、けんもほろろに断ったエリザベス。遺産のために縁談をまとめたい母親は嘆きます。
 Mr.Bennet:Your mother will never see you again if you do not marry Mr.Collins...And Iwill never see you again if you do.(父ベネット氏:もしコリンズ氏と結婚しないなら母親には二度と会えない。 もし結婚するなら私に会えない)(IBDbより拝借、訳はねむりねこ)
なんて機知に富んだセリフでしょう。これで父親の人柄と娘への愛情が分かります。
コリンズ氏は俗物の愚かな人物として描かれ、オースティン作品には俗物の牧師というのがよく登場し、決まって主人公に振られたりしています。この映画でもコミカルな役回りで笑いを誘います。

雨の中、Mr.ダーシーに求婚され意外な告白に戸惑ったエリザベスのセリフ。
Elizabeth:You were the last man in the world I could ever be prevailed upon to marry.
(エリザベス:たとえどんな事があっても、あなたとは結婚したくありません。)
英語の授業で習った覚えのある典型的な例文ですね。

主人公のキーラ・ナイトリーはエリザベスの勝ち気なところをうまく演じてたし、ダーシー役のマシュー・マクファディンも沈んだ表情などが役にはまっていました。
それに、脇を固めるベテランたちがいい味をだしていました。ドナルド・サザーランドは、危ない役をやらせたら右に出るものはいない役者ですが、今回は穏やかな優しい父を好演。ブレンダ・ブレッシンも、『秘密と嘘』に続いてミーハーで愚かな母親がぴったし。ジュディ・デンチが大金持ちの未亡人役で貫禄を見せます。

BBC版に比べて、時間の制約上話しの展開が早すぎたように感じました。原作がすばらしいので詰まらなくなり様が無いのですが..。
私が一番気に入ってる場面は、ダーシー家の邸宅を訪れた後エリザベスが物思いに耽りながら佇む、
ピーク・ディストリクトの風景です。(私は少し崖フェチです)パンフレットにロケ地がでていますのでイギリスに行く予定の人は要チェックです。 

ジェーン・オースティンの作品はよく映画化されます。『高慢と偏見』も昔、グリア・ガースン
ローレンス・オリビエ主演で映画化されてます。(私は未見)最後に私のお気に入りの映画化作品を紹介します。
エマ
グイネス・パルトロー主演で最もコメディ要素が強い。
いつか晴れた日に
「分別」の姉にエマ・トンプソン、「多感」の妹にケイト・ウィンスレット。エマの脚本が素晴らしく、私はこれが一番好き。