またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

“ライフ・オブ・デビッド・ゲール”は上質なスリラーだ。


ライフ・オブ・デビッド・ゲイル

今回の映画は“The Life of David Gale"(2003/米)。誰かの伝記映画のようなタイトルですが、アラン・パーカー監督、ケイト・ウィンスレット、ケビン・スペーシー主演のサスペンスドラマです。ここで豆知識、英語圏ではヒッチコックの作品のように、観客をはらはら、どきどきさせ、どんでん返しで観客をあっと言わせるような映画のジャンルをスリラーと呼ぶようです。日本では、ホラーとスリラーが曖昧になっていますね。借りてきたDVDでも、監督はじめスタッフが社会的メッセージを含んだスリラーだといってます。
公開当時映画館で見たときは、死刑制度問題を扱っているという様な予備知識もなく,アラン・パーカー監督作品ということで観に行きました。ストーリーが進むにつれ、どんどん物語に引き込まれ、構成の巧みさに息をのみました。

ファーストシーンは、地平線の向こうに走ってきた一台の車から女性が飛び出して行きます。車からは煙。ズームインしていくと、女性はケイト・ウィンスレットで、タイタニックで生き残った力強さそのままに、何かを抱えて必死に走って行きます。ここから、実はラストの重要なシーンに繋がっていくのですが...。

舞台は死刑執行が全米で最も多いテキサス州です。大学の元哲学教授のデビッド・ゲール(ケビン・スペーシー)は、元同僚のコンスタンス(ローラ・リーニー)をレイプ殺人した罪で収監されいて,皮肉なことに、二人とも死刑廃止運動の同志でした。ゲールは死刑が迫っており、週刊誌記者ビッツィー(ケイト・ウィンスレット)は彼の生涯最期の三日間の独占取材をゲール側から提示されます。他のメディアには一切口を割っていない、ゲールの秘密とは?平和主義者のはずの彼が、何故猟奇的殺人を?ビッツィーと見習い兼ボディーガードのザック(ガブリエル・マン)は、テキサス州の刑務所へと向かいます。

この映画のDVDは充実していて、特典映像として、監督の音声解説、製作ノート、削除シーンの他、テキサス州の死刑制度の実態までも解説してます。映画の中に当時のテキサス州知事G.w.ブッシュを思わせる知事が登場しますが、これはあくまでも創作であり、観終わった後死刑について考えてくれれば、と監督も語っています。

ここでいくつか気に入った英語のフレーズを紹介します。(私、ただいま英語勉強中です。)
ゲイルの取材のために、彼のいる刑務所へ向かう車中で。
ベッツィー:You know you're in the Bible belt when ther are more charchs than Starbacks.
ザック:When there are more prisons than Starbacks.
スターバックスより教会が目に入るようになったら、バイブルベルトに入ったてことよ。)
  (スターバックスより刑務所が多くなったらね。)
ここで野暮な解説をすると、スターバックスは全米を席巻しているコーヒーチェーン店で、何処でも見られる物の喩え。バイブルベルトはこのテキサス州等の南部の州で、キリスト教信仰の厚い地盤を指し、大統領選挙でも根強いブッシュ支持の地域でした。実際、この周辺は刑務所密集地帯らしいです。
  
もうひとつ、ゲイルが幼い最愛の息子と別れる場面で交わされる言葉遊び。
 See you later, alligator
After while , crocodile
Take it easy, Japaneezee
Okay-dokey, artichokey
以上ナンセンスな言葉遊びなので解説しません。

脚本はウィーンで哲学教授だったと言うチャールズ・ランドルフで、映画でもゲイル役のケビン・スペーシーが大学で哲学の講義をするシーンがあります。その中でこの映画のテーマにも通じる哲学者ラカンの言葉を引用します。
"Because in the end,the only way we can measure the significance of our own lives is by valueing the lives of others.
(結局のところ、我々の人生の意義を決めるのは、他者の命を如何に重んじたか否かによる)

大変に緻密な構成の脚本と大胆なストーリー展開。「物議を醸し出す映画は作る醍醐味があり、何も後に残らない映画は作る意味がない」とは監督の言葉です。
まだ書きたいことは一杯あるのですが、この辺で..。
スペルミスや、和訳ミスがあっても、笑って下さい。