またたびCINEMA〜みたび〜

大好きな猫や映画の小ネタなんぞをとりとめもなくつづってゆきます

映画-ア行

日独合作の奇妙な果実ー『新しき土』

本邦初の国際合作映画として1937年に制作された『新しき土』は、実に奇妙な映画だった。 監督はドイツ映画の巨匠アーノルド・ファンクという人。共同監督として伊丹万作が名を連ねて入るが、実際は補佐的な役割だったらしい。 ファンク監督は山岳映画が有名…

男と女の間には?―『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』

ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜/根岸吉太郎/2009/日本 映画館の暗闇でこの『ヴィヨンの妻』を観ながら、ふと、ある映画が思い浮かんだ。 成瀬巳喜男の『浮雲』である。 戦後日本の復興期を舞台に、腐れ縁で結ばれた男と女の話を描いた傑作である。小津安…

無知は罪なのか?―『愛を読む人』

The Reader/Stephen Daldry/2008/アメリカ、ドイツ 『愛を読む人』は、数年前のベストセラー『朗読者(The Reader)』の映画化である。 この2時間余りの映画は、愛の物語であり、市民の戦争犯罪に切り込んだ問題作でもある。 特に印象的なのは、年の離れた恋…

ヤクザと俳優、ふたりの人生が交錯する―『映画は映画だ』

映画は映画だ/Rugh Cut/Jung Hun監督/2008/韓国 水曜日の昼下がり女3人で歌舞伎町を歩いていると、前を行く黒塗りのセンチュリーが静かに止まった。前の座席から男が出て来て、後部座席のドアを開けた。場所が場所だけに予感はあったのだが、果たして登場し…

灯台の灯りが子供たちを照らす時―『永遠のこどもたち』

El Orfanto/J.A.バヨナ監督/2007/スペイン=メキシコ いやあ、心の芯まで震え上がった。座席から飛び上がるほど恐かったが、最高に面白かった。ホラーといっても、ゾンビがでてきたり、血がほとばしるスプラッターではない。クラシカルなゴシック・ホラーだが…

アイデアの勝利―『おくりびと』

おくりびと/滝田洋二郎監督/2008/日本 モックン主演の『おくりびと』が大ヒットしているらしい。滝田洋二郎監督の初期の作品が好きだったので、期待して見に行った。 映画も半ばを過ぎた頃、あちらこちらですすり泣きが聞こえて来た。そういう私も泣いてしま…

心も凍るロンドンの街角―『イースタン・プロミス』

Eastern Promises/David Cronenberg/2207/英・加 『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(05)でタッグを組んだ、デイヴィッド・クローネンバーグとヴィゴ・モーテンセンが帰って来た。またしてもクライム・ストーリーの傑作を届けてくれた。 今回は曇天のロン…

『アフタースクール』

After-school/内田けんじ監督/2007/日本 今年は日本映画を見るぞと思っていたが、もう半年が過ぎようとしているのに、まだ2作目である。 前作『運命じゃない人』が好評だった、内田けんじ監督の新作『アフタースクール』を見た。前作は見てない。はじめての…

楽しく騙されよう―『アフタースクール』

After-school/内田けんじ監督/2007/日本 今年は日本映画を見るぞと思っていたが、もう半年が過ぎようとしているのに、まだ2作目である。 前作『運命じゃない人』が好評だった、内田けんじ監督の新作『アフタースクール』を見た。前作は見てない。はじめての…

ちょっとキツイ、フレンチ・ノワール―『裏切りの闇で眠れ』

TRUANDS/2006/フランス 実は先月試写会の券をもらって観ていた。只で、しかもパンフまでもらって申し訳ないのだが、あまり面白くなかった。ギャング映画なので暴力描写があるのはあたりまえだが、そればかりが目立ってしまった。 『ゴッド・ファーザー』と比…

シロクマに謝りたい―『アース』

EARTH/2007/イギリス、ドイツ コンセプトは「究極の映像で描く地球のポートレート」だそうだ。 その言葉どおり、極北の雪山で冬眠から目覚めるシロクマ、すなわちホッキョクグマの親子のほほえましい姿をとらえたカメラは、地球を縦に南下しながら、トナカイ…

人生はパイのように楽じゃない―『ウェイトレス〜おいしい人生の作り方』

Waitress/2007/アメリカ TIME誌で今年の映画9位にランクされた『ウェイトレス』は、一見甘そうに見えて、実はスパイスの効いたコメディだ。 主人公の友人ドーンも演じている、監督・脚本のエイドリアン・シェリーには久しぶりに出会った。というのは、十何…

もう終わっちゃうの?―『ヴィットリオ広場のオーケストラ』

L'orchestra di Piazza Vittorio/2006/イタリア 渋谷のイメージ・フォーラムで単館上映している『ヴィットリオ広場のオーケストラ』が、こけてしまったらしく、現在レイトショーをやっているものの、30日の金曜日で終わってしまいます。私は先週駆け込みで7…

岩井俊二+市川崑=『市川崑物語』

いつのまにか、市川崑の映画が好きになっていた。はじめて観たのはどの作品だっただろう?>>歳の差なんて関係ない この世の中で一番話の合う人に出会ってしまった 岩井俊二岩井俊二監督がチェーンスモーカーの巨匠と出会った時、マニアックな照明の話を延々…

アメリカでは『父親たちの星条旗』よりも『硫黄島からの手紙』なの?

今日アカデミー賞のノミネート作品の発表があり、ゴールデン・グローブ外国語作品賞に続いて、『硫黄島からの手紙』が作品賞にノミネートされた。確かに『硫黄島〜』は丁寧に作ってあって好感の持てる作品だが、映画としては『父親たちの〜』の方が、着眼点…

痛いけれど、おかしな『イカとクジラ』

The SQUID and the WHALE(2005/米) ポスターを見て、絶対に観に行こうと決めていた作品。家族と思しき4人がソファに向かい合って話してる様子なのだが、ローラ・リニーの足もとに灰色の猫が!それに「イカとクジラ」というタイトルが意味不明でね。ブルッ…

クライム・ストーリーの傑作『ヴェロニカ・ゲリン』

ヴェロニカ・ゲリンという人は驚くべき人である。 ダブリンの実在の新聞記者が、スラム街の子供達の麻薬禍に心を痛め、ギャングの裏社会に単身潜り込み、麻薬組織の元締を探り当てた途端に暗殺されるまでを描いている。 大筋の出来事や記録に残っている部分…